オハナ
おそらく一般的には珍しいことなのだろうが、わたしは亡くなった夫のお父さんと仲がいい。
夫が生きていたころは、普通によくいる義理のお父さんと嫁だった。ちょっと普通ではないくらい仲良しになったのは夫が亡くなってからだ。
最初のうちは、亡くなった夫の役を、お義父さんで埋め合わせしようとしていた節がある。お義父さんはわたしを気分転換させようと、「あそこへ行こう」「ここへ行こう」とよく連れまわしてくれたからだ。
でも、あるとき、この人は亡くなった夫のかわりにはなりえない、という当たり前のことに気づいて泣けた。その後、しばらくお義父さんが疎ましくなった。
お義父さんがわたしのことを人に「嫁」ではなく「娘」と紹介することに嫌悪を感じて、「嫁です」とわざわざ言い直していた時期もある。
でも、そういういろいろな感情を経て、いまはむしろわたしのほうが「嫁」ということをすっかり忘れ、「娘」気分で甘えまくっている。日本に帰国するときは、かつて暮らしていた湘南の二世帯住宅にも必ず帰るどころか、両親のいる実家より長く滞在することさえある。
それは、「嫁」だからという理由ではもちろんない。単純にお義父さんに会いたいし、湘南の家が好きだし、そこで過ごすことが楽しいからだ。この感覚はもはや「娘」でもないかもしれない。
今年は5年ぶりに日本で年末年始を過ごすことが叶ったが、大晦日と元旦はお義父さんと湘南の家で迎えた。わたしがそれを選んだ。一昨年にだんなさんを亡くした親友も来てくれて、愛犬もいて、たくさん笑った。
ハワイの言葉では家族のことをオハナという。でもオハナが意味するのは血のつながった家族とは限らないそうだ。血がつながっていなくてもオハナはいる。
義理のお父さんとは、オハナ。それが一番しっくりくるかもしれない。人間として尊敬しているし、精神的な意味での絆は誰よりも強く感じる存在。
血のつながった家族がいる人、いない人、いるけど離れている人、関係がうまくいっていない人、いろいろな状況があると思うけど、血のつながりだけが家族じゃないって考えられたら、少し楽になるかもしれない。