ラブラドールが我が家にやって来た
人生を変える1日は突然やってくる。そう書くと大げさだけど、でも、わたしは土曜日の朝、起きて、1カ月前に家にやってきた仔犬の2回目の予防接種を受けに行って帰ってくるまで、人生で2匹の犬を同時に飼うことになるとは思ってもみなかった。しかし、その日の午後に5歳のラブラドールのメスが家にやってくることになって突然、2匹の犬のオーナーになった。
フルタイムで仕事を持つわたしたち。ランチタイムには会社が近い相方が帰ってきてくれるけれど、やっぱり仔犬を一人にしておく時間が長いのはかわいそうであろうというのは我々のここ最近の議題であった。2匹いれば仔犬の「一人で何にもすることない」ストレスが減るのではないかと。
しかし、前述したようにフルタイムで仕事をしている我々が仔犬を2匹同時に育てるのはとても無理があるから、いまの仔犬がある程度大きくなってからもう1匹を検討するのが現実的ではないかとわたしは提案していた。しかし、課題は、いま幼い仔犬が一人でいることだから、仔犬が大きくなってからでは2匹飼う理由がもうないと相方。それもそうだわねぇと議論が袋小路に陥っていたところに、飼い主が転勤により泣く泣く手放すことになり、新しい里親を探しているラブラドールがいるという情報が入ってきたのだ。
見に行ってみるだけ…と言いながら、我々は、即決して連れて帰ってこられるように車の荷物をどかしてスペースをあけて、仔犬も連れて見に行った。
レスキューの人の家に預けられていたその子はわたしと目があったとたん、撫でられるために近づいてきて、その瞬間、ああああああ、この子を置いていくなんてできない、となってしまった。
ものすごく聞き分けのいい子であることはすぐわかり、彼女がうちの仔犬とうまくやれないことはないだろうが、逆に仔犬のほうは嫌がる可能性があるので、とりあえずお試し外泊でもいいと言ってもらって連れて帰ってきた。
最初は仔犬が自分のテリトリーと思っているところに彼女が侵入すると仔犬がけたたましく吠えたが、なにせ5歳で大人な彼女は仔犬を過剰に刺激することなく、ほどよい距離感で、吠えられながらもぐっと我慢してくれ、一晩寝たら、仔犬のほうは彼女のことが好きになったみたいで、仔犬が彼女の後を追っかけ回して、うっとおしがられているくらいに立場が逆転していた。
仔犬を育てるにあたっては、大人の犬がいるほうがいいというのは、シェルター(保護施設)の人に言われたことだけど、この2日間で早くもそれを実感している。
仔犬が「遊んで遊んで」とねだって鳴いても、ラブラドールは完全無視(笑)。すると、仔犬はおとなしくなって、鳴いても遊んでもらえないのだと学ぶ。ラブラドールはいい子なので仔犬が多少ちょっかいを出したくらいでは怒ったりしないが、やりすぎになるとガルルと一喝。すると仔犬はここまでやるとやりすぎなのだと学ぶ。わたしたちだったら「何かわたしたちがやり足りていないのかもしれない」と罪悪感を抱いてついかまってしまいそうな状況だが、犬同士のやりとりを見ていると、ああ、ハイパーすぎるときは放っておいていいんだとわたしたちも学ぶ。

ブラドールの寝姿を見ていると、日本で義理のお父さんと暮らしているラブラドールを思い出し、比べてしまって、彼が恋しくなるのだけど、でも一方で、家族を持つという(まあ、犬だけど)、亡夫と果たせなかった夢を、7年経って改めて現実化していっているということがうれしくもある。新しく来たもう1匹というのが日本にいるラブラドールであったら最高だったけど、それはもう諦めよう。自己満足でしかないけれど、2匹を責任持ってかわいがることで自分を納得させようと思う。