10.15.2019

カスタムオーダーしたサーフボードができあがったのだが、取りに行ってみるとある箇所が注文通りでなかった。

カリフォルニアにおいてカスタムオーダーをするとまず8割の確率で注文通りにできないとはいろんな人が言っていること。覚悟は多少はしていたが、しっかりしたブランドだし、シェイパーと直接話したし、後日セールスマネジャーから送られてきた見積もりにはその注文について言及がなかったのでわざわざ指摘して、再見積もりをしてもらったという経緯があるだけに、そこまでしてもなお注文通りでなかったことには少々がっかりした。

久しぶりになるべく封印していた言葉がでてきそうになった。「日本だったらこんなこと起こらないのに」。

でも、自分の中には微妙にカリフォルニア化された自分もいて、その人は「いやいや、この箇所はボードの性能にまーったく関係ない小さなことじゃん。細かいこと言うなや」と突っ込む。

やれやれ。こうなると自分の中に対立が生まれて疲れるので、今回はカリフォルニアンな自分を採用した。何をしたかというと、とりあえず、取りに行ったショップで対応してくれた店員と話してもラチがあかないので、ボードは引き取って、メールでセールスマネジャーに事の経緯を説明し、小さなことだし、作り直せとは言わないから、その部分を差し引いた請求書を再度発行してほしいと依頼した。

セールスマネジャーからはすぐにお詫びの返事が来て、該当部分を差し引いた請求書を出してくれた。そして、気持ちとして、ショップの店員に、オリジナルギアを何か無料でプレゼントするように伝えておく、とも。

かくしてわたしは残りの支払いをしにショップに行ったのだが、当然のように、店員に話が通っていて、名乗るだけですべてがスムーズにいくということはなかった。ここで、カリフォルニアンなら「ところでマネジャーから、お詫びに無料で何かくれるって言われたけど」と言うだろうし、言えば店員は「OK」と対応してくれたことはわかっている。けれど、なぜかここでは日本人のわたしが出てきてしまい、支払いだけしてすごすごと帰ってきた。

帰りの車の中で、しばらく、「あー、気の弱い日本人丸出しだなぁ…」と悶々としていた。特にすっかりアメリカ人化している相方はこの経緯を聞いてわたしが何ももらってこなかったことを知ったら、一言ちくりと言うだろうな、と。

けれど、ここで日本人のわたしが突如、高らかと宣言をした。「ええい、じゃかあしい、こちとらサムライじゃ! 武士は食わねど高楊枝。お詫びの気持ちは受け取るけど品物は受け取らない、物がほしいわけじゃない、ほしかったのは謝罪だ。それがサムライスピリッツだと、堂々としていればいいではないか」(どこの方言だ)。

そうなのだ。アメリカにおいては、日本人の意識のままでいると、主張が弱くて見下されたり、不利な立場に陥るのではないかと、いつもどこかで気を張っていた。特にこのような交渉ごとではなおさら。だけど、突然でてきたサムライに熱弁されて、心底同意できた。いいじゃん、日本人のまんまで。

言いたいことがよくわからない変なアジア人と思われたくなくて、がんばっていた自分がいたことに気づいたし、いやいや、いいじゃん、変なアジア人と思われたとしても、自分がそれが自分らしいと堂々とできればそれで、と改めて思えた。

どんな自分もOK。自分をまたひとつ許可してあげることができた気がする。このひとつは小さなことなんだけど、これを積み重ねると違う景色が広がることは体感済みなので、なんだか、楽しみだ。

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