12.19.2019

まだわたしが日本にいて、結婚する前で、フリーランスのライターだった頃。編集者と夜飲みに行く日程を立てるときに、「あー、その週は“入稿の週”だから駄目だ」と言われることが度々あった。
わたしも、「あー、入稿の週か、そりゃ、駄目だね」などと調子を合わせていた。入稿の週というのが次号の雑誌の印刷に向け、印刷所に渡すデータを作り→印刷所にデータを渡し→ゲラをチェックして→校了する(印刷に回す)週であるということは理解していたが、当時、編集職の経験がなかったわたしは、それが遊びの予定を入れられないほど大変であるということは、実感としてはわかっていなかった。でも、わかったふりをしていたのだ。
自分が編集者になってわかった。雑誌一冊分の入稿は大変である。一番大変なのはデザイナーだけど、それを全部チェックする、直しが入ったら即対応するという役目がある編集者も大変なのである。
このときの直しの対応はクリティカルで、間違いがあってはいけないので神経も使う。場合によっては緊急に著者に確認を取らねばならない。でも著者が必ずしも連絡に応じてくれる状況とは限らない。その対応に追われるので、夜遊ぶ約束をしていてもキャンセルしてしまう可能性があって、だから「入稿の週だから駄目だ」だったわけである。
ほかに、編集者になってわかったことでいえば、ライターさんに仕事を頼む立場になったことで、信頼できるライター像というのはどんなものかがクリアになった。ライターだった当時のわたしはわかっていないなりに、信頼ポイントを押さえていたから、仕事が途切れることなく続いていたんだなということがよくわかる。同時に、あの頃、自分がライターとしてさらにもう一つ突き抜けるために足りなかったことが何かもいまはわかる。
とりあえず新年号の“入稿の週”が今週で終わり、長くて大きな波が一段落してほっとしている。つかのまのホリデー気分を満喫しようと思う(でも、クリスマスはファスティングするのでご馳走は食べない)。