01.13.2020

今日オフィスに挨拶に来たコピーマシーンのスペシャリストが立ち去った後の香りにはっとした。この10年以上ずっと忘れていたブランドの名前が脳のどこか奥深くから突如として出てきた。THANN。30代なりたてで東京でがつがつ働いていたわたしは、当時出会ったこのタイ生まれのブランドの何ともいえないオリエンタルな香りに癒され、決して安くない商品にもかかわらず独身アラサーキャリアウーマン(古い)の特権とばかりにシャンプーもリンスもお香も何もかもをこの香りでそろえるという贅沢を楽しんでいたものだった。ああ、そう、祐天寺の、アパートだった。そこには、後に夫となり亡くなってしまった彼も時折来てくれた。そのとき我々の関係は複雑であったので、THANNの香りのおかげで、その時代の寂しさまで思い出してしまった。あのときのわたしは、そうやって好きな香りに散財することを心の支えとして生き延びていたような気がする。いつのまにか、あのときの寂しさは消えてなくなっていて、いま40代半ばとなったわたしには、あのときのわたしがいじらしく、愛らしく思える。懐かしくて、じつに10年以上ぶりにTHANNの商品をポチっと買ってみた。タイにも行きたくなった。タイはわたしが亡夫とはじめて海外旅行した場所。旅行中、四六時中ずっと一緒に行動しても一度も険悪にならなくて、なんて気が合うんだろうと思った。いろいろ思い出すのは命日が近いからに違いない。

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