01.27.2020

小学生の頃の夏休み。従兄弟の家からの帰り際、従兄弟が裏庭からヤマユリを取ってきてくれた。なんという力強い花であろうか! わたしはひと目でヤマユリとやらを好きになって、そう母に告げた。すると、母は「そう? お母さんは、ユリはけばけばしいから大嫌い。お花はかすみ草とか、もっと可憐ではかなげなほうがいい」と言った。母にしてみれば自分の好みを告げただけであることはいま考えればわかるのだが、多感だった幼いわたしはその言葉を脳内でどんどん変換したようで、最終的には「可憐ではかないほうが母に愛される」となり、「女の子は可憐ではかないほうがいい」という呪縛になった。あれから10年、20年、30年と、年を重ねるごとに、母からの(彼女にとっては他意はなかった)呪縛をどんどん解き放って、わたしは身軽になった。呪縛を知らなければ、この身軽さに気づけなかったと思うので、一度呪縛を受けて試行錯誤することが、自分には必要だったのだと思う。