08.07.2020

サンディエゴにはミラマー海兵隊基地という海兵隊基地があって、その敷地内に、Flying Leatherneck Aviation Museumという無料の博物館がある。主にこのミラマー海兵隊にかかわる戦争の歴史と軍用機が展示されている。サッダーム・フセインが乗ったというイラクの軍用機もあったりして、無料とはいえなかなか歴史的に貴重なものが見られるので、そういうのが好きな人にはたまらない博物館だと思う。

わたしは数年前に取材でこの博物館を訪れた。取材ということで、元軍人の館長が直々に案内してくれた。館内には戦争史の展示もあって、当然、第二次世界大戦のパートもあって、日本軍の軍服(捕虜のものだろうか)や所持品なんかも展示されていた。記憶があいまいなのだけど確か原爆のキノコ雲の写真もあって、我々の間にはしばし気まずい沈黙が流れた。その後、館長は、「Well, you know…」と間をつないでから、言った。「わかるでしょう、戦争を終えるためには致し方なかったことだと」。

ああ。噂には聞いていたけど、そういう認識か。何か言いたいことがたくさんあるような気がしたけど、わたしは結局、苦笑いだけしてその場をとりつくろった。ザ・日本人だ。言い訳すると、取材だったというのもあるし、当時は今より英語に自信がなくて伝えたいことを伝えたい通りに伝える自信もなかった。でも、何より、どちらが良いとか悪いとか議論をすることはしたくなかったというのが大きい。それぞれの立場からの真実があるから、良い悪いを決めるための議論では何も生まれないとわたしは思っていた。だからずっと議論が苦手だったんだけど、最近になって、議論というのは良い悪いを決めるのではなくて、「互いの立場からの視点を知る」ことなのだと考えられるようになった。

今なら、あの館長に言える。「反論する気はありません。でも、この雲の下では、数え切れないほどの数の一般市民が、何の前触れもなく、この世のものとは思えない地獄を体験しています。直視できないくらいのひどい光景です。あなたはそのことを知っていますか?」。原爆によって戦争を終えられたという視点を否定するのではない。ただ、どういう理由であれ、起こったことは悲惨だったのですよ、ということを伝えるだけ。しかも、あなたのような軍人じゃない、あなたの家族のような、一般の人に起こったのですよ。 

その館長についてはわからないけれど、意外とみんな原爆でどんな悲劇が起こったか、よく知らないんだと、アメリカに来て知った。日本では夏になれば何かしら戦争を伝える映画なりテレビなりが放送されて、自然に学んだけれど、日本以外の国ではもちろんそこまで学ばないのだ。逆に言うとわたしはアメリカの歴史を知らないわけで、知らないことを責めるわけじゃない。ただ、自分が知っていることを伝えることはちゃんとしていきたい。

みんながみんな英語を使えるようにならなくてもいいとは思うのだけど、でも、日本は他の国と比べると英語を駆使できないことで、世界に、日本の持っている大事な何かを伝えることに遅れを取っているんじゃないかと思うようになってきました。わたし個人が世の中に伝えられることなんてめちゃくちゃ小さいけれど、でも、せっかく(?)国外にいるのだから、自分は日本人として日本をRepresentしているのだという意識を持って生きていきたい。同時に、わたし自身、他の国、世代、さまざまな立場の視点からの情報をはなから拒絶せず、心を開いて聞いていきたいと思うようになった。年かな? 年だな(笑)。

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