薔薇のメッセージ

「もし、私に何かメッセージをしたいときは、薔薇になって出てきてちょうだい」。9年前に亡くなった夫にはそうお願いした。

生前に口頭でお願いしたわけではない。亡くなってから、わたしがそう「決めた」というだけ。要はおまじないみたいなもんだ。薔薇を見たら、「わたしは見守られている」と信じられる、そんな感じ。

薔薇にしたのは、彼が最期の日々を過ごした寝室で、少しでも気持ちが和むようにと、窓辺に薔薇を飾ったことが心に深く残っているから。もうベッドの上で半身を起こすことさえ精一杯だった彼が、最後に見た美しきものは薔薇だったと信じているから。裏を返すと、その程度のもんで、深い意味はない。

今の夫と再婚してもいいかもと思ったのは、もちろんこの人がいいと思ったってことは第一なんだけど、初めてのデートで薔薇を一本持ってきてくれた、ということも大きい。わざわざ買ったわけではなく、家の軒先に薔薇があって、今日咲いていたから、というのがまたよかった。この人とデートすることを亡夫は悪く思っていなさそうだと思えるのに十分な出来事だった。

で、ここまでが前置きで、本題はここから。

新プロジェクトを始めたおかげか、ここのところ、自分の身辺、というか、心の奥深くが大きく動いていて、また一つやりたいことが出てきた。普通の仕事も忙しい上に、新プロジェクトなんかも始めて、その上でまたやりたいことって、どんだけやりたがりやねん。そう思って、ちょっと興奮した頭を冷やそうと1階にコーヒーをいれに行った。お湯を沸かしながらふと裏庭に目をやると、そこにポツンと、ピンクの薔薇が落ちていた。

うちは玄関先には薔薇はあるけど、裏庭にはない。しかも玄関先の薔薇は赤い。もちろん、降ってわいたわけではなく、何らかの理由でどこからか運ばれてきたとはわかるが、今、このタイミングで、普通ならないところに薔薇がある、というのは、わたしにはもう十分すぎるほどのメッセージでした。どんなメッセージって、亡夫からの、そのアイデアいいから、がんばれよ、だと。

今これを書きながら、もしかしてこの花は薔薇じゃないかもとちょっと思い始めているのだが、まあ、自分が薔薇って最初に感じた、メッセージだと思った、ということがここでは重要ということで。

そうして、薔薇の写真を撮影しながら、どんどんやりたいことを思いついて、じゃかじゃか動く、それはまるでありし日の前夫のようだな、と、今の自分に亡夫の影響を見て、ちょっとうれしくなった。

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