覚悟を決める

数週間前からアドラー心理学という言葉になんども出てくるのでいくつかの本を読むことにした。アドラー心理学は名前は知っていて、なんとなく内容も認識しているつもりでいたが、本を読むのは初めてであった。

読んでみて、「性格は後天的なものだから変えられる」とか、「現状を引き起こしているのは過去(トラウマ)ではなく未来(の目的)である」とか、この数年、わたしが自分で感じて考えてまるで自分の手柄みたいに思っていたことが、アドラーの理論だったということを知った。

なかなか面白くて、ほとんどのことについて「なるほど!なるほど!」と納得できたのだけど、一方で、自分が20代後半から30代前半にかけて精神的に本当にしんどかったときだったら、これはちょっとヘビーで、受け付けなかったかもしれないなぁとも思う。要はすべての責任は自分にありますよって言われるので。あの頃より格段に自己信頼ができるようになって自己肯定感も増しているいまの自分なら、それで打撃を受けることなく、むしろ、「よっしゃ、全部自分で決められることならがんばれるわ」と思えるが、がんばってもがんばっても空回りでむしろドツボにはまっていたあの頃は、「自分のせいじゃない。母との関係がうまくいっていなかったことが、このつらさの原因だ」と思えることが救いだったし、そう思えたことで、じゃあ、その原因と向き合ってみようと思えて、ようやく次のステップに進むことができた。

というわけで、こういうのは、どっちが正しいというのは、たぶんない、というのがわたしの感想である。なんであれ、自分がしあわせになる(自分のしあわせのためには周りの大切な人もしあわせであるということも含めて)ことが第一で、その人の環境、精神的なステージ、さまざまなことによって、しあわせを追求するための最適な手段は違ってくるってことだと思う。

わたしが書けるのはやっぱり自分が体験なり取材なりを通して本当に理解できたことだけ。しかも、わたしにとって最適だったものが、誰しもに最適とは限らない。ただ、試してみてはどうかという選択肢をひとつ多く提示することができる、というだけだ。

でも、そういう書き方って、従来のマスメディアでは嫌われる。受け取り手はみんな時間がないのか、思考停止なのか、「あなたは明日からこれをすればいいんです」というわかりやすいものに反応する傾向があるというのが現実で、「こういう方法もあるかもしれませんよ」と断言を避けて選択肢を提示するだけのようなものはキャッチーじゃなくてマスでは受けない。みんな昨今のマスメディアを悪くいうけど、どっちもどっちというか、マスは多くの人に受けてなんぼだから、受け取り手の多くの人が望んでいることをやっているうちにいまみたいになっちゃったという側面もあるんじゃないだろうか…。

ただ、これからの時代は、そこが変わってくると思う。多様性がもっともっと認められていくだろうこの先の世界では、みんなによい方法をひとつ断言するというのが難しくなるから、結果「マスコミュニケーション」というシステム自体、機能することが難しくなっていくんじゃないか。それは面白いことだと思うけど、マスからパーソナルメディアのほうに細分化していくと、今度は受け取り手の知性というか、スキルが問われることにもなる。なにが自分にとっていいのかを見極めて選びとる力を自分たちが持たねばならない。

個の時代になっていくといわれるけど、それってただ自由になるというだけでなくて、自分で考えて自分で動いて自分で責任を取るってこともついてくる。その覚悟ができない人は、きっとしんどくなる。けど、時代はいやがおうにも変わっていくだろうから、覚悟はいまのうちにしておくのがいいでしょうね。さて、自分は覚悟ができているか?

*このウェブログを読んでくださっている皆さん、いつもありがとうございます。今後は時折、短編や詩などもここで投稿していきます。ちょっとびっくりされちゃうかもしれないので先に宣言しておきます(読んでいただけたらうれしいですが、読まれなくても気にしないので、どうぞこれまで通りよろしくお願いします! フィクションの場合は「Essay」でなく「Short Story」というカテゴリになります)。

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