自分のリミッターの外し方

ウクレレ演奏をたしなむようになって5年くらいになる。

5年といっても別に毎日練習をしているわけではなく、時々、思い出したように持ち歌を演奏したり、気になる曲のウクレレ楽譜を探してきてちょっと弾いてみる、という程度だ。

それでもこの5年の間に弾けるコードは増え、難しい曲も自分の得意なコード進行の簡単なアレンジにしてもらえば弾けるということも覚えて、まったくのビギナーから初中級者と言っていいくらいには上達したと思う。

そんなわたしに「そこまで弾けるなら次はアルペジオやカッティングができるといいね」と相方が言ってきたのは何年前のことだったか。

簡単に説明すると、アルペジオとは和音を構成する音を一音ずつ弾いていく演奏法。カッティングは音を一瞬休止する奏法で、ツッツッタッの「タッ」のサウンドのこと。

確かに、それができるようになったら俄然演奏が玄人っぽくなる。というわけで、相方に教えてもらって練習してみたのだが、思ったより難しい。そもそも相方は高校生のときからギターを弾いているから軽々できるだけであって、弦楽器をこれまでやったことのないわたしにはハードルが高いのではないか。まだ自分はアルペジオやカッティングなどを練習するレベルではないんじゃないか。そう思って、そのうち練習もしなくなった。

***

わたしには憧れの先輩ウクレレ奏者がいて、その人が率いるウクレレ仲間の会に参加させてもらっている。

先週、コロナ以降、初めてウクレレ仲間との集まりが再開されて、みんなで大演奏会をした。

じつに1年以上ぶりだ。

仲間の中には、もともと仲間にいたTくんと結婚したことでウクレレをはじめたMちゃんもいる。

Mちゃんはウクレレ仲間の会に初めてきた1年半前はひとつのコードも弾けなかった。

ところが。

その日、Mちゃんは、「けっこう練習してきました」といって、我々の前でいきなりキレッキレのカッティングと雰囲気のあるアルペジオを披露したのである。

それを見たわたしに何が起きたか。

覚醒です。

何に覚醒って、これまでずっと「わたしには難しい」と言っていたカッティングとアルペジオが、Mちゃんの演奏を見て、急にできるようになったのである。

うそのような本当の話。

***

その日、帰り道の車の中で、相方に、「君は負けず嫌いだから、嫉妬すると突然上達するんだね」と言われた。

確かに負けず嫌いで、目の前ですごい演奏をされて、「わたしも負けていられない!」という心境になったことは否めない。

でも、いきなり弾けるようになったことは、負けず嫌いというだけではない気がする。わたしより後にウクレレを始めたMちゃんが演奏できている姿を見て、「なら自分にもできるのではないか」と心から思えたことが大きかったような。

つまり、「わたしにはできない」リミッターが急に外れた、ということだ。

ここが難しいのだけど、リミッターは外そうと自分で思えば外せるわけじゃない。なんらかのインプットがあって、その結果、リミッターが外れるというアウトプットが出てくるのだ。

わたしの場合、Mちゃんが軽々と弾いているということがインプットになって、「え、じゃあ、できるかも」に急に意識が変わったんじゃないか。

意識が変わったおかげで、急に弾けるようになったんじゃないか。

***

なんだか難しそうだ、と思う目標があるとき、それをすでに達成している人の話を聞くといいというのはよく言われる話。すでに達成した人なら達成のために役立つ情報をくれるからだけど、それだけでなく、「こんな難しいこともちゃんと達成している人がいる」という事実が自分にインプットされて、自分にもできそうだというふうに意識が変わることこそポイントなのだと思う。

わたしにはいま、達成してみたいことがいくつもあるんだけど、それらも、「意外とできそうだ」と思えるようになるまで、すでに達成している人をどんどん探していけばいい。

いや、ほかに努力することももちろん必要なんだろうけど、どんなに努力しても意識が「できない」と思っていたらなかなか前進しないので、意識を変えるための努力という地味なことこそ、なおざりにしてはいけないのだ。

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