自分らしさは探さなくていい

まだ40代後半で神様の視点から見たらまだまだ人生ひよっこであることは承知の上で、それでも、この年齢になってわかったことがたくさんあります（わかったつもり、であるだけかもしれませんが）。そのひとつが、「『私』というものはない」ということ。今回はそのことついて書きたいと思います。

「「私』というものはない」というと言葉のパワーが強くてそれだけで受け取り拒否しちゃいそうなので、もう少し柔らかく言うと、「『これが私』といえるような『確固たる私』はない」ということです。

「『これが私』といえるような『確固たる私』はない」わけですから、「これが私らしい」というような確固たる定義をすることもできません。だから、若い子には、「私らしさ」とかそんなもん、探さないほうがいい、苦しくなるだけだから、と老婆心ながら伝えたい。

たとえば、海を思い浮かべるとわかりやすい気がします。

大荒れのときもあれば、凪いでいて波がひとつも立たないときもある。夕焼けに染まって水がピンク色に見えることもあれば、雨の後、見るからに汚い水のときもある。どの海が「海らしい」のでしょう？　

もし夏の海水浴の海だけを「海らしい」とするなら、それは海のほんの一部だけしか認めていないことになります。蛇足ですが、海が大好きで日常的にサーフィンをしている私からすれば、大荒れの海も、凪の海も、ピンク色の海も土色の海も、どれも海らしい。強いて言えば、そうやっていっつも違う表情を見せてくれるのが海らしい、とさえ思います。

人間もそうじゃないでしょうか。

怒っているときもあれば、穏やかにまるで天使のように寛容になれるときもある。明るい気分のときもあれば、沈んだときもあるし、体調絶好調のときもあれば、いまいちのときもある。どのときだけが自分らしいって決めるのはたくさんある自分の一部しか認めていないことになります。それって、しばらくはいいけれど、続けるとしんどくなるはずなんですよ。しんどいとしたら、それはあなたにとって真実じゃありません。

「私らしさ」にこだわって、「XXXXであることが私らしい」と決めつけてしまうと、しんどくなるときがきます。だって、XXXXも◎◎◎◎も△△△△も、それが自分から出てきたものであるなら、全部自分らしいはずなのですから。

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ヨガやマインドフルネスではよく、「今ここ」を感じる、ということを大切にしろ、と言われます。

私はヨガと出会って細々と続けてきて15年（！）、ヨガを西洋に伝えたパラマハンサ・ヨガナンダの設立したSelf Realization Fellowshipの生徒となって朝晩の瞑想を日課にして1年半。数年前から「今この瞬間ここで私が感じていること＝私」ってことなんじゃないかと感じるようになってきました。

あくまでも「今この瞬間のここ」は一瞬です。だから、一秒前の「今ここ」の私は、超ハッピーだったのに、一秒後の「今ここ」の私は、激おこということも起こります。そうやって絶え間なく変わっているのが人であるし、超ハッピーである瞬間はそれが私で、激おこの瞬間はそれが私。どっちじゃなきゃいけないってこともなければ、両方あることが矛盾にもなりません。だって、その瞬間ごとに完結しているのですから。

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若い頃は、「私らしさ」についてよく考えましたし、特に、文章においてはどうやってカラーを出そうかと、そればっかり考えていました。

でも、今は、肩の力が抜けました。

私はそれを、絶え間ない人生修行のおかげだと思っていますが、母に言わせれば「それが年を取って図太くなるということである」そうです。だから、かつての私のような若い子たちに伝えたくてこれを書いているけれど、やっぱり若いうちはわからないものなのかもしれません。

それでも、書きたい。

今この時に自分が感じていることを正直に表現していくこと、その連続が「自分らしさ」になるんだろうと、今は考えています。だから、がんばるとしたら、「自分らしさ」を見つけることじゃなくて、「その瞬間の自分を見つめ、受け入れ、表現すること」のほうだと。まあ、それを毎瞬やるのはよほどの人生マスターにならないとできませんけど、心掛けるでも人生変わります。

もちろん、この考え方が「正解」かはわかりません。でも、もしこの考えを採用して、気持ちが楽になるなら、それはやっぱりあなたにとっての「真実」なのだとは思います。

ここではないどこかに「本当の私」はいません。今、しんどくてここから逃げたい人には、この言葉は重たいかもしれません。でも、しんどいことはつらいけれど、悪いわけじゃない。今、この瞬間はしんどい自分いる、それだけ。そんなふうに捉えてみることからはじめると、何か変わるかもしれません。