エッセイ Category

07.12.2020

日本に提出する書類を記入するにあたって亡くなった夫の名前を漢字で書いたら、急にしんみりした。その名を漢字で、手書きで、書いたのは本当にずいぶん久しぶりの気がする。この書類が受理されたら、わたしは、亡くなった夫とは書類上では縁がなくなってしまう。それは同時に、亡くなった夫のお父さんやご家族、そして共に暮らした家や土地とも、書類の上では関係がなくなるということでもある。心の絆は残るとはもちろんわかっているけれど、形式っていうのはけっこう大事というか重みがあって、形式上、関係がなくなるということは、心の絆が残るというのとはまた違うレイヤーの話で、寂しいことは寂しいのだった。 でも、仕方ない。というか、寂しいけれど、それを望んだのは自分だってわかっているから、どうしようもない。 亡くなった夫と結婚するまで、結婚なんて紙切れ一枚のことで、共に暮らしていくのなら、紙切れ一枚を出そうと出すまいとそんなに変わらないって思ってた。けれど、実際に紙切れを出してみたら、日々の暮らしの何が変わったわけではないのに、我々の関係は確かに変わった。たぶん、紙切れ一枚を出すことで、自分たち自身が夫婦という関係にコミットしたのだと思う。あと、紙切れを出しているかいないかで周囲からの扱いも変わるので、それも自分たちの関係のセルフイメージを変えるのだと思う。 わたしが亡夫と結婚したことも、いまでも彼のことを思い出さない日はないことも、たぶんこれから変わらないのに、今回の、その書類を提出することで、わたしと亡夫の関係は、わたしの意識のなかでまた変わって、結果としてわたしの何かが変わるんだろう。

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