美しい蝶がいました。
目を奪われて、しばし見入っていました。
そのあいだ、わたしが立っていた草原では
風が吹き、鳥たちが鳴いていました。
けれども、蝶に夢中のわたしは気がつきません。
やがて蝶が視界から消え、
我に返ったわたしは家路に着きます。
目を閉じると、今もあの美しい羽が
揺れるさまが思い浮かびます。
そこまで見えた記憶はないのに、
触覚が動いているところまで見える気がします。
わたしが見たのはアゲハ蝶でした。
でも、自覚がないだけで
わたしの体は、アゲハ蝶が舞っていた
その場のすべてを感じ取っています。
生暖かい風が吹いていたこと。
鳥たちがうららかに歌っていたこと。
もしかしたら遠くでは
サイレンの音が聞こえていたかもしれません。
ヨガの練習は、
そういった意識の全体を
体を通して思い出していく時間なのだと思います。
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二十年前、三十歳だったわたしは
東京で受けた初めてのヨガクラスで
泣いてしまいました。
たぶん本当はずっと泣きたかったのです。
でも当時のわたしは、
前を向かなきゃいけないと思っていて
それに気がついていませんでした。
「人生はいいことばっかりじゃない。仕方ない」
そう言い聞かせていました。
ところがヨガをしたら、
泣きたかった自分が出てきました。
体を動かし、呼吸をしていただけなのに
奥にしまっていた感情が
ふっと浮かび上がってきたのです。
そのとき初めて、
「わたしは本当はつらかったんだ」
と気がつきました。
ホットヨガだったので
涙も汗もわかりゃしない。
おかげで心ゆくまで泣けて
帰り道はみょうにスッキリと
穏やかな気持ちだったことを今も覚えています。
・
わたしたちは普段、
自分が意識できている世界だけを
現実だと思って生きていることが多い気がします。
でも実際には、
体はもっと多くを感じ取り、
心はもっと多くのことを知っています。
それらを切り離したままだと、
本当の意味で自分の人生を生きることは
難しくなると思っています。
ヨガのプラクティスは
そうして分かれてしまったものたちと
体を通してもう一度つながっていく時間。
体、呼吸、感情、思考…内側にあるぜんぶを
ひとつの「自分」として感じていく。
そんな時間になることを意図して
クラスをさせてもらっています。
蝶を見ていたあの草原で、
気づいていなかった風や
鳥たちの気配まで感じられるようになる。
そんなふうに
自分の世界が少しずつ広がっていく。
そうして広がっていった先に
豊かさや自由があって
のびのびとした真の自分が立ち上がる。
わたしたちはその旅をしている仲間。
またスタジオでお会いできることを
楽しみにしています。
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